方位磁石の指す方向。
第2章 scene 2
言い出したら止まらない。
「そもそも!なんで智が好きなんだよ!
男なんだよ!?翔さんも智も!
おかしいと思わないの!?」
「おかしいなんて、思わない。」
「なんで!?!?
男なんだよ!?女じゃないのに!
男に恋するなんて、おかしい!
変だよ!」
言いたいことを全部言い切ったら、
なんだか涙が込み上げてきた。
「怒ったり泣いたり、
忙しいヤツだな。」
ぽんぽんっと頭を撫でられた。
「触んないでよ!
好きでもないくせに、
優しくしないでよ!!!」
翔さんの腕を振り払う。
翔さんは、笑ってた。
わからない。
わからないんだ。
自分の気持ちにも、
翔さんの気持ちも。
「大体!翔さんが
勘違いさせるようなこと、するから!
なんでキスなんて、っ…するんだよ!」
「…それは、………。」
「言えないんでしょ!?
じゃあっ、…しないでよ…っ!」
ボロボロと溢れてくるのは、
温かい涙の粒。
涙で景色が歪んで、
もう翔さんの顔は読み取れない。
「……二宮」
「…もう、いいよ。
ばいばい…。」
落としたカバンを拾い上げ、
歩いていこうとした。
だけど、止められた。
腕を引っ張られて、
前みたいに翔さんが微笑む。
前みたいに、キス、された。