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方位磁石の指す方向。

第10章 scene 9






今俺、どんな顔してるかな。


「痛く、ない…?」

「っん、だい、じょぶ…」


違和感が、半端ない。
泣き出したくなるほど、
気持ちが悪い。

それでも、そんなこと言えなくて。

翔さんも、頑張ってくれてんだ。
だったら俺だって…。


「我慢、するなよ…?」


優しい声。

…あぁ、もう。
俺はまた、惚れる。

何度でも、惚れ直してしまう。


また、視界が揺らぐ。
きっとバカげた顔を
しているんだろうな…。

「二宮、もう一本、いい?」

「…ん、」

ウソだろ。

一本でも苦しいのに、
もう一本なんて入るするわけないだろ。

ふーっ、ふーっと
肩で呼吸しながら
翔さんの左手を握る。


「っ……!」


思わず、翔さんの左手を
強く握ってしまった。

…やば、バレる…。


「…やっぱり、痛い…?」


心配そうに覗き込んで、
俺の手を強く握り返す。


「っううん、へいき…だから、
続けて…?」


大丈夫。

だって、翔さんだもん。
翔さんだから、受け入れられるよ。

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