方位磁石の指す方向。
第10章 scene 9
いい?だなんて、何度も確認してくれる。
やっぱり、優しい。
この人を好きになってよかった。
この人が初めてでよかった。
そう心から思える瞬間だった。
「…じゃあ、挿れます。」
「はい、」
ふたりで畏まって何やってんだ。なんて
思ったけど、意外に真剣そうな顔を見たら
俺も乗っちゃって。
大丈夫、大丈夫…。
って心の中で暗示をかける。
翔さん自身が宛てがわれる。
一気に体温が急上昇した気がする。
…俺、あんまり触ってないのに、あっつい…
翔さんが、また、“いい?”って確認。
もう何度目かもわからない。
返事するのは億劫だったから、
ゆっくりと頷いた。
そうしたら、
ひんやりとしたローションを纏った
翔さんの先端がゆっくりと
俺のナカに入ってくるのがわかって。
「…ぃ、たっ…」
想像以上で。
俺が身を捩れば、
逃がすまいと腰を持たれて。
「っ…ぁ、あっ…」
翔さんが俺の右手に指を絡ませて、
無理矢理唇をこじ開けてきた。
痛い、苦しい…
そして何よりも、嬉しい。
やっと、ひとつになれたんだって。
形だけなのに。
「ごめ、もうちょっと我慢して…」
「っん、んんっ…」
口元を押さえて、涙を堪える。
…やだ、泣いたら心配させちゃう。
翔さんだって耐えてる。
だから俺だって頑張れる。