方位磁石の指す方向。
第11章 scene 10
いつの間にか、子供っぽいキスは
あまりしなくなっていた。
俺はそのキスだけでも十分だったけど、
翔さんはそうではなかったみたいで。
少しは変わると思ってシたセックスも、
やってしまえばとても単純なことで。
思春期というものは、厄介だ。
「…あ、見て、翔さん。」
頭上を指差し、微笑みかける。
「…わ、綺麗…」
「だね。」
俺達の頭上に広がるのは、
満天の星空だった。
思わず吐息が漏れた。
そんな俺を翔さんが引き寄せた。
「ん、なーに?」
「…もう少し、このままがいい。
もうちょっとだけ、一緒にいよう?」
ありきたりなセリフ。
だけど翔さんからなら
どんな言葉でも嬉しくって。
「…翔さんと俺だけの秘密ね…
ふふ。ふたりだけで、共有しようね?」
暗がりの中、翔さんに向かって
その言葉を発すれば
ふんわりと笑ってくれる。
あぁ、このまま時間が
止まっちゃえばいいのにな…。