方位磁石の指す方向。
第11章 scene 10
そう?だなんて。
俺の気持ちも知らないで
俺とくっついて歩く翔さん。
その体温がこの季節には
少しだけ暑くて。
ぬるい風に頬を撫でられる。
…擽ったい。
翔さんの柔らかい指が絡む。
びっくりして、翔さんの方を見た。
だけど翔さんは、
なんにも気にしてないみたい。
………気にしてるのは、俺だけ。
気にしてるの、全部俺だけなんだ。
───わかってる。
翔さんがそんな人じゃないって。
信頼してるけど、
聞きたくない言葉が翔さんの口から
出てきそうで怖いんだ。
「……あのさ、」
翔さんが、怖いわけじゃない。
「俺二宮のこと、
困らせちゃってるのかな。」
ただ、翔さんがどう思ってるか知りたくて…
「ごめん、なんか俺
独り善がりしてるよね 笑」
俺が壊れていきそうで怖いんだ。