方位磁石の指す方向。
第11章 scene 10
「っ、そんなこと、ないよ…」
ただ、俺が悪いから。
俺がこんなこと考えるから…。
「いいよ、無理しなくて。
俺が二宮のこと好きでばっかいたって、
どうしようもないし…」
「違うっ……」
俺だって、翔さんのこと好き。
翔さんが思ってるよりも、もっと…。
「…ごめんなさい、翔さん…」
泣いちゃいそうだ。
目の前の景色が、
ボヤけては溶けていく。
「ごめんっ、なさ、」
俺がもっと翔さんの気持ち考えるから…
「しょお、さんの、ことっ…
すっ、き、だから…っ」
だから、嫌いにならないで。
「…泣くなって。ごめん…。
俺が悪かった。」
「ちがっ、おれも、」
「お願いだから、なんも言わないでよ、
悪いのは二宮じゃないから…」
引き寄せられて、キスされて。
ひさびさにした、
“子供っぽいキス”はしょっぱい味がした。