方位磁石の指す方向。
第12章 scene 11
「─────二宮いる?」
ざわめく昼休みの教室にでも、
ハッキリと通るこの声。
聞き慣れた声に気付いて
声のした方を向いたらそこには案の定、
俺の大好きな人が立っていた。
「…あ、二宮いた。」
おいでおいでって手招きされて、
翔さんの方へ緩む頬を押さえて向かう。
「…なに。」
嬉しいくせに、
気持ちが空回りして無愛想な言葉と表情。
目すら合わせられなくて、
口調もちょっとキツめ。
すぐに後悔したけど、
今更態度を改めることなんてできなくて。
「なに、まだ怒ってんの?」
はぁー、って深い溜め息。
「おいで。」
腕を引っ張られて、
教室から出てどこかへ向かう翔さん。
「…ちょっ、ちょっと…!
脱臼するから…!
ね、ねぇ、聞いてんのっ…!?」
俺の言葉を一切無視して、
歩き続ける翔さん。
「〜っ!もう!やめてよっ!」
翔さんの手を振り払って睨み付けた。
そしたら、翔さんは吹き出して。
「なっ、なに!?」
「ふはは、やっと二宮に戻った。
なに、何で怒ってたの?」
「っ…教えたく、ないし。」
翔さんのこと好きすぎて、
ちゃんと自分の気持ちに
応えられないなんて、
言えるわけないでしょ。