方位磁石の指す方向。
第12章 scene 11
「…まあとりあえず、
元気そうでよかったわ。」
ぽんっと頭を撫でられて、
思わず涙が零れそうになる。
何日ぶりかの、翔さんの手。
こんなに、大きかったけなぁ…。
「っ……もう、帰るっ」
「え?二宮?」
引き止めてくれるかな、なんて
少しだけ期待しちゃってたけど、
翔さんそんな人じゃなかったっけな。
教室まで戻ってきて、
やっと気付いたんだ。
…バカなことしちゃったな、て。
離れてるのは、俺なんだ。
翔さんの気持ちに応えられないのは
俺の方だったんだ。
空回りしてばっかりで、
期待だけして、結局は後悔。
「おお、和帰ってきたの?
なになに、何の話?」
「……別に。」
こうやって、潤くんにも冷たい態度とって、
嫌な思いさせちゃうんだ。
一番嫌な思いをしてるのは、
俺なのかもしれないけど。
「…ごめん、潤くん。
今話す気しない。」
机の上に出した弁当をカバンにしまって
はーと嬉しくない溜め息をつく。