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方位磁石の指す方向。

第12章 scene 11






「なに目ぇ逸らしてんの?」

「っ…ぁ、」


頬を掴まれて、
無理矢理翔さんの方へ顔を向かせられる。

…なんで、こんなことになってんだ…。

潤くんと帰るはずだったのに、
なんで…。


「やっ、だ!」


思いっきり腕を振り払ってみたけど、
力の差は歴然としていた。


「なに、お前。
いい加減素直になれよ。」


怒ってるのが、わかる。


今日のお昼も、拒絶して、
今この瞬間も、嫌がって。


いい気分なんて、しないだろうけど、
俺は今、翔さんと一緒にいたくない。


「俺らって、恋人じゃねぇの?」


普段より、荒い言葉遣い。
それから、鋭い視線。

思わず、ビクッと肩を揺らした。


「俺に対する気持ちって、
そんなもんだったんだ。」

「ーっ!…違うっ」

「違くねぇじゃん。
もういいわ。

お前のはっきりしないそういうとこ、
俺あんま好きじゃない。」

「っ…しょ、」

「もういいから、勝手に帰れば。」


拒絶、って、
こんなに辛いことだったんだ。

目の前が、濡れていく。


地面にシミをつくるのは、俺の涙のせいか、
タイミング悪く降り始めた雨のせいなのか。

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