方位磁石の指す方向。
第12章 scene 11
失望した。
自分自身に。
「…会いてぇ。」
今頃、なに言ってんだ。
「ちょっと、翔!どこ行くの!?」
「…友達んちに忘れ物したから」
今はただ、謝りたい。
ちゃんと、顔を見て。
走ればすぐにある、二宮の家。
ふーっと深呼吸してから、
控えめにインターホンを押した。
「…はーい…あ、翔くん?
大きくなったね〜」
「あ、すいません…
にのみ…和也、いますか…?」
「少し調子悪いみたいだけど…
よかったら上がって?」
「…ありがとう、ございます…」
調子悪いって、どうした?
夕立──?
…とにかく、
早く会いたい。
ーコンコン、
「二宮…」
布団に包まって、眠る二宮。
熱冷まシート…?
…風邪?
「…ぁ、翔さ…」
「喋るな。」
二宮の唇を塞いで、
手首を押さえ付ける。
「はぁっ、は、」
熱すぎる体。
せめて、もう少し…
「翔、さんっ… 」
潤んだ瞳の水分量は増し、
声は掠れている。
「どんな具合?」
「微熱…」
「食欲は?」
「ない… 」
「吐き気とかは?」
「翔さん見たら、なくなった…」
愛しすぎて、抱き締めた。