方位磁石の指す方向。
第2章 scene 2
そっかそっか。
それしか言わない智。
それでもいいんだ。
話が聞いて欲しい。
自分一人で背負うには、
大きすぎるから。
「…で、翔ちゃんとは
どうしたいの?」
「…別に。」
「別にってことないでしょ?
このまんま一生意地張るの?」
「意地張ってない。」
「…そうですか。」
「…そうですよ。」
ぷっ、と二人で顔を見合わせて笑う。
やっぱり、智といると、
気持ちが楽になる。
でも、智は
きっと相葉さんのものになる。
だから、今だけ独り占めさせてね。
この距離は、俺だけのもの。
…今だけ、ね。
「…翔さんと仲直りしたい。」
「だよね。うん。」
「…でも明日休みだし。
連絡先知らないし。」
「翔ちゃんの?
あ、交換してないの?」
「…うん。」
「あー、じゃああとで「今!」
今じゃなきゃ、嫌だ。
思い立ったら、すぐ行動。
これ、俺のいいところ。…多分。
「仕方ないなぁ…。
…はい。これ。」
「…あんがと。」
ただ、メッセージを送るだけなのに、
なんだか緊張する。
恥ずかしくて、文字が打てない。
そんな俺を見て、
智が溜め息。
「あー、もう!貸せっ」
「あっ、ちょぉっ!」
俺が反抗したところで、
なにも変わらない。
智が文字を打つ。
「…これでよしっと。」
「はぁ!?なんだよこれ!!」
「え?メッセージ送ってあげただけ。
和、焦れったいんだもーん。」
「…っの野郎…」
智の柔らかい頭を
ぺしっと叩いてみた。
『明日、午前九時に駅前。
話したいことあるから。』
…話したいこと、
たくさんある。
……少しだけ、智に感謝。
あ、既読ついた。
『ごめん。
明日塾だから。
午後なら空いてるけど、
二宮の予定は?』
……バカ。
塾なんかより、友達の方が……
俺の方が、大事なんだろ。
『そっか。
じゃあいいや。ごめんね。おやすみ。』
……既読、ついたけど、
返信はなし。
諦めて、いいんだよね。
別に…残念じゃないし。