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方位磁石の指す方向。

第12章 scene 11






柔らかい唇が離れていく感覚。

何度も唇を合わせる度に、
わかるようになった。
その度、寂しくなって、
俺からキスを強請る。

合図は、翔さんの袖を引っ張ること。


でも今日は、
そんなまどろっこしいことしない。

早く、キスして欲しいから。


「…もう一回、して…?」


だって口に出した方が、
伝わるの早いでしょ?
今日はすごく、翔さんに甘えたい気分。
…いつも甘えてるか。

でも、いつもの倍くらい甘えたい気分。


「…んぅ、」


なんにも言わないで、
顔を近付けてきたから
咄嗟に目を瞑った。

……あ。


いつもよりちょっと長めのキス。

…そういう、お誘い……?


え、でも、どうしよう。
親、いるし。

あ、え…?

どう、しよ…。



パニック状態に陥る寸前、

「好きだよ。」

また、ふわりと微笑んでから、
俺をゆっくりと押し倒した。





…あ、


これ、
もう逃げられないヤツだ。

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