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方位磁石の指す方向。

第12章 scene 11




強く強く抱き締めて、
隙間なんてないくらい密着した。

もっと、一緒にいたいと
自然と体が動いていた。


「……泊まってく?」

「うん、泊まってくよ。
だから今日は、ずっと一緒…だよ。」


二宮に向かって微笑めば、
嬉しそうに、はにかみながら

「よかった。」

なんて可愛い顔で言う。


もっと、一緒にいたくなる。

もっと、ふたりで笑いたい。

もっともっと、二宮のことを知りたい。
奥まで隈無く。


「…好きだよ。」


耳元で囁いて、優しく頬に触れた。

それから、潤む二宮の瞳をしっかりと見つめ、
優しく優しく抱き締めた。

ちょっと甘酸っぱい気分だ。
付き合いたてみたいな新鮮さがある。


「…俺も、好き…」


少し震えた声。

上目遣い気味の瞳に、
また欲望が溢れ出しそうになる。

随分と強欲になったものだ。

ひとりでも生きられるなんて、
そう思っていたのに。

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