方位磁石の指す方向。
第12章 scene 11
…何やってんだって、
急に恥ずかしくなった。
あーもう、結局空回り。自己嫌悪。
「…あつ……」
ふいに聞こえた、翔さんの声。
うーん、と唸り声が聞こえて、
起こしちゃったかな、
なんて不安になるのも束の間。
俺の方へ体を向けて、
優しく抱き締めてくれた。
暑いなんて言ってるくせに、
俺のして欲しいこと、
寝てるのにやっちゃうんだ。
…ずるいでしょ。
「……かず、なりぃ…」
夢の中でも、
俺と一緒なんだ。
しかも、名前呼び。
…でれでれしちゃってさ。
本物がすぐそこにあるっていうのに。
たとえ、夢の中の俺でも、
嫉妬するんだから。
翔さんのバカ。
「…?」
翔さんの大きな手が俺の頬に触れた。
…だめだ。
ドキドキが収まらない。
もう、寝れそうにないや。
翔さんの寝顔を見てたら、
思わず唇に目がいってしまった。
…だって、すごい綺麗なんだもん。
キスくらい、しても気付かれないよね。
…これは、不可抗力ってことで…ね。
「…ん、」