方位磁石の指す方向。
第12章 scene 11
スポンジに洗剤をつけて
俺家事できますアピールしている
二宮が健気で可愛いと思った。
家事はやらないタイプだと思ったから
率先してやるのは意外だと思った。
…危なっかしいところが
あるんだけどね。
「二宮、それ洗剤つけすぎ笑」
「え、でも、泡いっぱいあった方が
汚れ落ちるんじゃないの…?」
「いや、そこまで食器の量ないし
そんなに出したら勿体ないだろ。」
「…そうなの?」
ほーら、やっぱり家事なんて
やってないんだ。
…でも、こういう空間も、
悪くないかもしれない。
なんか、新婚さんみたいだ。
「ふふ、翔くんたち新婚さんみたい〜」
「うっ、うるさい!
智はあっち行って!」
「まあまあ…落ち着けって」
智くんにおちょくられて
顔を真っ赤にさせる二宮は
やっぱり可愛くて。
家事なんてできなくてもいいから、
二宮に嫁になって欲しい。
なんて一人で考えてはにやにやしていた。
「…翔さんのえっち…」
「は?」
「一人でにやにやしてて、
気持ち悪い。
どうせえっちなこと考えてたんでしょ。
……俺がいるのに。」
頬を膨らませて、
ぷいっと顔を背けてしまった。
「ち、違う違う!
確かに二宮のこと考えてたけど〜…!」
「……ぅなり…」
「…え?」
「和也、って呼んで…」
瞳をうるうるにさせて、
俺を軽く睨み付けた。
漫画とかでよくある、
胸が締め付けられる感覚に陥った。
「…ごめん…和也」
「っ〜…!」
顔を余計赤くした二宮が
また背を向けた。
「あっ、おい、ちゃんと洗えよっ」
「…も、やだっ…
恥ずかしくて溶けるっ…!」
顔を押さえながら
俺をちらっとみた。
「…こうなったの、翔のせいだから…」
なんて、
恥ずかしそうに言うんだ。