方位磁石の指す方向。
第12章 scene 11
「え、今、翔…って…?」
「…ぅるさい…」
頬をバラ色に染めて、
キッチンから出ていく二宮。
その背中を追いかけようとしたけれど、
まだ食器洗いが終わってない。
どうしたもんかと葛藤したけど、
あとで二宮と思いっきり
いちゃつこうと思って、食器洗いを再開。
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「…遅い」
不貞腐れている二宮。
スマホをいじる指を止めて、
俺を軽く睨んでいる。
「いや、二宮が」
「和也!
ふたりのときはそう呼ぶってゆった!」
バカ!アホ!
なんて言いながらも、
俺に抱き着いてきた。
本当は、寂しくて仕方なかったくせに、
やっぱりツンデレなんだな。
「…ごめん、和也。…お詫び」
「…んっ…」
柔らかい唇が触れて、
そっと目を閉じた。
甘い香りが鼻孔を掠める。
「…ねぇ、もう一回して…?」
…ほら、すぐにスイッチ入るんだ。
準備は万端だったんだろう?