方位磁石の指す方向。
第13章 scene 12
気付くと考えていたり、
気付くと目で追っていたり。
こういうのが、“恋”なんだろうな。
だなんて今更ながらに痛感する。
「あ、翔さんっ」
お昼休み。
いつもと同じように俺の教室の前で
あの声がした。
今日は少し高めだ。
何かいいことがあったんだろうか。
声だけで、二宮のことを
なんでもわかってしまう。
それだけで、通じ合えている気がした。
二宮の全てを分かり切ろうとは
思ってないけれど、
二宮のことを知らないのはいやだ。
「あのね、今日、
いつもより小テストの点数よかったんだ。
だから、嬉しくて。」
「そっかそっか。
二宮が頑張った証拠だな。」
「うん、頑張った証拠。」
ふふ、だなんて、幸せそうに笑う。
それから俺に近付いてきて、
「翔さんの卵焼き美味しそう。」
って、欲しそうに見てきた。
「いいよ、あげる。
じゃあ俺は二宮のウィンナーもらうから。」
「っえ、ほんと?ありがと。」
ふわり、と微かに香る二宮の髪の毛。
女子でもないのに、
いい匂いなのはなぜだろう。
「ん〜っ、美味しいっ」
翔さんありがとう。って、
また俺を見つめるから、
こっちまで幸せになるんだ。