方位磁石の指す方向。
第13章 scene 12
結局は、俺の言って欲しいことも
思ってることも全部わかっちゃう。
「…あ、見て。」
「ん?」
「空めっちゃ綺麗だよ。」
指を指した先には、
雲一つない青空。
「おー、マジで綺麗だな。」
「ね〜」
ほら、こんなことでも
翔さんは笑顔になってくれる。
…前だったら。
前だったら、こんなことできなかった。
恥ずかしくて、気まずくて、
俺から話しかけられないで
休み時間が終わっちゃってた。
「…じゃあ、またな。」
「うん、あとで。」
バイバイをする前は、
ちょっと寂しくなる。
またすぐに会えるのに、
なんだか悲しくなる。
「…あ、」
「…へ?」
ぎゅ、と抱き着かれて
何事かと思えば
「和也」
って小さく呟いた。
突然のことで何が何だかわからなくて、
でも、まだ耳には翔さんの声が、
肩には翔さんの温もりが残っている。
「…翔…」
俺もつられて、呼んでしまった。
だって、すごい呼んでほしそうな
顔してたんだよ。