方位磁石の指す方向。
第13章 scene 12
「なーなー」
ムシムシした暑い体育館から
やっと解放されて教室に入った瞬間。
「どうしたの?潤くん。」
「今日さー、空いてる?」
「んー、ごめん。空いてないや。」
「…先輩?」
「うん、ほんとごめんね。」
「いや、いいよ。」
じゃあまた今度ラインするわ。
なんて言いながら相川と教室を出ていく。
…俺、翔さんとばっかり遊び過ぎ?
そう言えば、最後に潤くんと相川と
帰ったのって、いつだろう。
翔さんとは割と近くに住んでるから、
いつでも会おうと思えば会えるけど、
潤くんと相川は家の方向も違うし
地区も全然違うから
あんまり帰ったことなかったかも。
…俺、大切にできてない…?
ひとつの“好き”ばっかり守ってる…?
“好き”なんていくらでもあるのに、
俺はひとつの“好き”しか大切にできてない。