方位磁石の指す方向。
第13章 scene 12
櫻井side
早く終わんねぇかな。
そんな呑気なことを考えていた。
これが終われば、二宮と帰れる。
これが終われば、二宮とふたりっきりで…。
気付いたらホームルームは終わっていた。
チャイムが鳴り終わるまでには、
二宮を迎えに行きたい。
あと、五分で鳴っちまう。
ここからあっちの校舎まで歩いて三分。
…ギリギリ間に合うか。
とか思ってたけど、
今日は部活もない関係で人が多過ぎる。
間に合わねぇな…。
ちんたら歩く前のヤツに
痺れを切らしそうになる。
…いや、こんなところで切れたって
なんの意味もねぇしな。
二宮と会えなくなるだけだし。
耳を塞ぎたくなるほどうるさい声。
これだけの人数がいれば
当たり前かもしれない。
やっとのことで着いた二宮の教室。
中を覗けば机に座って
誰かと親しげに話している。
…潤…ではないし。
……あ、あれだ。
いつも良く一緒にいるやつだ。
名前、なんだっけな。
…あ、あい…あいなんとかってヤツだ。
俺の二宮に気安く触りやがって。
肩なんか組みやがって。
…二宮も、満更でもない表情すんなよ。