方位磁石の指す方向。
第13章 scene 12
「…二宮、」
「っあ、翔さん!
ごめん、相川。帰る。」
「お、おーうっ。またな。」
「うんっ、またね!」
またそうやって可愛い笑顔を振り撒いて。
…相川だって、
めっちゃ瞳孔開いて二宮のことを見てるし。
……心配に、なるじゃねえか。
「…ごめん、待たせたな。」
「ううん、そんなことないよ。
なんかあったの?」
「いや、なんもなかった。」
「ふふ、そう?」
「おう。」
少し首を傾げて笑う。
女子がしても可愛いと思わないのに、
二宮がすると不思議と可愛く見える。
…二宮効果?
なんだそれ。
「あ、あのね、」
俺の一歩後ろの二宮に裾を掴まれた。
緊張してるのか、
少し声は上擦っている。
「…あ、あの…えっと…」
恥ずかしそうに何度も視線を逸らしては
また俺を見てくる。
「俺…翔さん家に、行きたい…」
ぽっと頬が紅く色付く。
一瞬なんのことか全くわからなかったが、
すぐに理解した。
「…学校で…そんな大胆のこと言うんだ。」
「っちが、く、はない、けどっ…」
「ふは、いいよ。早く帰ろうか。」
ぎゅ、と強く手を握り締めて
軽い足取りで校門を出た。