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方位磁石の指す方向。

第13章 scene 12




夢中で走った。
翔さんに見つからないように。
追いつかれないように。

こんな俺、嫌い。

自己中で、面倒臭くて、
劣等感が強くて。


本当に、面倒臭いヤツ。


「…っ二宮、」


…ほら、足遅いから。


腕を思いっきり掴まれて、
引き止められる。

今、翔さんの顔を見たら、俺───


「…泣くなよ。」

「泣いてなんて、…っ」


あぁ、もう。

なんでこんなに
俺のことわかっちゃうんだよ。

俺のことなんて、放っとけばいいのに。

お節介で、バカ真面目で…。


そんな翔さんだから、
きっと好きになっちゃたんだ。


「…あ、二宮追いかけて
気付かなかったけど、ここどこだ?」


わかんねー、なんて言いながら
スマホを取り出して調べ始めた。

その時に離れた腕。

寂しくて、手繰り寄せた。


「…ん?寂しかった?」

「…ん、」


ぎゅう、っと翔さんの腕を抱き締めたら、
涙はすぐに引っ込んだ。

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