方位磁石の指す方向。
第13章 scene 12
情緒不安定なのか、
なにか悩み事でもあるのか。
行為が終わったあとの二宮は、
どこか思い詰めた表情をしていて。
何も言わない二宮を心配している。
だけども、無駄なことは言いたくないし、
俺はかなり鈍感だから傷付けたらって思うと
そんなに深くまでは聞けないんだ。
「…翔さん、」
「ん?」
俺の名前をぽつりと呼んでから、
「ううん、なんでもないよ。」
なんて、
そんなに泣きそうな顔で言われたら
心配になるに決まっている。
…だけど、余計なことを言って
こじらせたくないんだ。
「…あぁ、いいよ。」
そっと肩を抱き寄せて、
優しく口付けた。
ほんのり色付く頬に触れた瞬間、
二宮から抱き着いてきた。
「…好き。」
切なそうに震える声と、
涙で潤んだ瞳。
「…っ二宮、」
「ううん、なんでもないよ。
だから心配しないで…?」
そんな泣きそうな顔で言われたって、
説得力ない。
「……言わなくて、いいから…。
黙ってろよ。もう。」
さっきよりも強く強く抱き締めて、
首筋に顔を埋めた。