方位磁石の指す方向。
第14章 scene 13
期待してたけど、
やっぱり的外れ。
翔さんって本当、
そういうところが欠如してる。
女の子の気持ち…じゃないけど、
乙女心…でもないけど、
なんていうか、ほら……。
恋してる側の気持ち?って言うのかな。
ぜーんぜん、わかってない。
「…あ、」
窓から見えた、二人の姿。
仲良さそうに話してる翔さんを見たら、
少しだけ嬉しくなった。
嫉妬している自分がバカみたいだ。
こんなに、翔さんのこと好きなのに。
好きだから、心配なのかもしれないけど、
信じてあげなきゃどうするんだって。
「…うん、平気…」
呟いてから、リビングへ向かった。
そろそろかな…と
玄関付近で待ち伏せしていれば、
二つの影が見えた。
…そろそろだ。
ー ピンポーン♪ ー
家中に響き渡る音。
すぐに出たらおかしいから、
ちょっとだけ焦らす。
ー ピンポンピンポーン♪ ー
…とか思ってたけど、
うるさくなるばかりだ。
これじゃあ、こっちが我慢出来ない。
「…お待たせ、」
ロックを解除してから、
二人を見上げた。
「和くん遅いよ〜
待っちゃったじゃん?」
「いやそんな待ってねぇよ?」
仲良さげに…って、仲良いのか。
仲良く話す二人を見ていたら、
やっぱり少しだけもやもやする。
こんなすぐに嫉妬して、
どうするんだって。
…バカみたいだ。