方位磁石の指す方向。
第14章 scene 13
櫻井side
なんとかなく、
様子がおかしいなと思った。
雅紀への対応がいつもより手荒で、
俺のことを意識してるのか知らないが、
妙に慎重で丁寧だ。
「…ほら、相葉さんは智のとこ行きなよ。
寝てるかもしれないけど。」
「え〜寝ちゃってるかなぁ?」
「知らない」
…やっぱり、
少しだけ…ていうかかなり雑?
「それじゃ、和くんばいばーい」
「もうっ、いいからっ」
ふぅ、と怠そうに溜め息を吐いてから、
俺の方を向いた。
「ぅおっ、と、」
廊下なのにも関わらず、
抱き締められた。
「…会いたかった、」
「おう。」
やっぱり、変だ。
「……んで、」
「…え、は?」
聞こえなくて、
聞き返したつもりだった。
「…ずるいよ、バカ…」
「ず、ずるい…?なにが?」
「…翔さんの、隣…俺の…」
俺が理解できていたないのを察したのか、
「…ごめん、俺ばっかり…」
なんて、寂しそうに視線を落とす。
「二宮…?」
「…ごめんね、…嫉妬、しただけ…」
「…え?…しっ、と…?」
「…もう、俺、バカみたい。」
顔を赤くさせて、また俯いた。
そんな姿が、可愛くて、愛おしくて。
「…心配させて、ごめんな。」
心配っていうよりも、嫉妬だろうけど。
「…ううん、いいの。」
ちょっとだけ寂しそうな瞳の色は
消えていないけれど、
さっきよりも息は落ち着いている。
そっと頬を包んで、
優しく触れるだけのキスをした。