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方位磁石の指す方向。

第14章 scene 13




「そろそろ行く?」


辺りが薄暗くなってきた頃。

漫画を読む手を止めて、
翔さんの方を見た。


「…うん。」


にっこり微笑んで、
翔さんの手を取った。


「あ。」

「ん?」

「…上着、持ってけよな。
外は寒いし。」

「…うんっ、」


俺のことばっかり気にかけてくれて、
ほんと、優しいんだね。

翔さんの言葉だけでも、
あったまっちゃうよ。


「財布持った?」
「持った。」

「携帯は?」
「持った。」

「ティッシュは?」
「…要らなくない?」
「思った笑」


笑う時に下がる眉。

結構、好きだったりする。

なんか、こう、来るものがある。


「じゃ、行こっか。」

「うん、」


俺の手を握る俺よりも大きい手。

いつもよりも温かい。
外の気温のせいもある?

でも、体の芯から温まる気がする。

好きな人と一緒にいるから、
体感温度上がってるのかも。

…なんてね。

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