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方位磁石の指す方向。

第14章 scene 13



触れた手から伝わる熱が心地よかった。

涼しい…というよりは、
少し寒いくらいだ。

だから、翔さんの手が温かくて
心地がよかった。


「…ん、そうだ。」

「ん?」


そっと俺の方を向いた。


「何食べたい?奢る。」

「えっ、悪いよ…。」

「いいよ。初めてだし。」

「へ…?」

「好きな人と祭来んの、
初めてなんだって。
カッコつけたいじゃん。」

「…バカ。」


そのままでも、
十分カッコいいじゃんか。

これ以上カッコよくなられたら
俺が困るでしょ。

でも…
こういう日くらい、
素直にならないとダメだよね…。


「…焼きそば」

「ん?」

「焼きそば、食べたい。」

「オッケー。」


それだけの会話だけど、
恥ずかしかったし、
変に緊張してしまったんだ。

今の態度、悪かったかな。

顔見て言えなかったけど、
翔さんはどんなふうに思ってるんだろう。


…ダメだ。

こんな日まで暗い気持ちになったら
楽しめないじゃん。

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