
方位磁石の指す方向。
第14章 scene 13
熱が未だに残る唇。
夜風にさらされて
その熱が奪い去られる。
「……。」
無言で翔さんの服の袖を引っ張る。
ちょっと上目遣い気味に、
潤んだ瞳を向ける。
確信犯、だから。
「…したい?」
…いじわる。
俺の恥ずかしがってる顔が見たいんでしょ。
…えっち。ドエス。
「…ん~…っ」
したいとも何も言わずに、
困ったような声を出す。
幼い子供みたいに、
ちょっと高い声で強請ってみる。
「…なーに、お前。」
俺の頬を優しく撫でてから、
顔を近付けてきた。
…キス、だ。
ぎゅっと目を瞑って
今か今かと待っていた。
ちゅ、
と、いつもよりも響くキスだ。
「……ん、」
そのまま、翔さんの舌が
俺の唇に触れた。
「…ん、ぅ…」
誰か来るかもしれないのに、
こんな大胆なことするなんて、
翔さんはバカだ。
「…っは、ね、もぉ…」
やめる気配は、ない。
ぎゅー、と抱き潰されながら、
キスをされてると、
何も考えられなくなる。
この状況に身を委ねたくなる。
