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方位磁石の指す方向。

第14章 scene 13


櫻井side


俺の胸の中で震えてる二宮が
いつもよりも可愛くて。

唇を重ねる度にぴく、と肩を動かす。

そっと頬を包み込めば、
また、潤んだ瞳で俺を捉える。


「……ぅ、ん、」


キスに夢中な二宮は、蕩けた顔をしている。

そんな顔で見られたら、
こっちは融通が利かなくなる。

もっと、二宮が欲しくなる。
奥の奥まで、隈無く…。





「も、ばか…」


キスが終われば、いつもの二宮に戻る。

少し憎たらしさもあるが、
それ以上に愛くるしさが溢れる。

溢れた想いは戻らない。
このままいっそ二宮を攫いたくなる。


「…なぁ、」

「……なに。」


ぷっと頬を膨らませ、
不機嫌そうに俺を見る。

俺は二宮に微笑みかける。
二宮は動揺している。

「なんだよぅ。」と、
子供のような声を漏らし、
俺から目を逸らしてしまう。

離れたままの手が寂しいから、
そっと二宮に歩み寄った。


「…なに。」


同じ口調。同じトーン。

まだ意地を張っているのが
堪らなく愛らしい。



「…手、」

「は?」

「繋ごう?」


いつもと何ら変わらない口調で、
二宮に問いかければ。


「……うん。」


少し照れたように目を伏せ、
俺の左手をきゅっと握った。

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