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方位磁石の指す方向。

第14章 scene 13




繋いだ手のひらは、もう、自然な形。


「…花火、どこで見ようか。」


まだ、お祭りらしくない。全然。

二宮は少し考え込むように俯いて、
「うーん」と唸ってから
ぱっと顔を上げて。


「あそこにしよう!
学校の破れたフェンスがあるところ!」

「…あー、入学式の?」

「そうっ!そこ!」


…よく、そんなこと覚えてたな。

入学式。
初めて二宮と会った日。


「けど、見えるか?」

「うんっ、あそこ、
結構眺め良いし、よく見えるんだよ。」


なんで、そんなこと知ってるのか。
引っ越してきたのは、
割と最近なくせに。

…敢えて追求はしないけど。


「…智と、行ったんだ。」

「ん?」

「小さい頃、智とふたりで見たんだ。
すげー怒られたけど…笑」


…なんだ。

智くんとか。


「でも、ほんとに綺麗だったよ。
ほらっ、早く行こ?」

「おう。」


花火が始まるまで、
まだ時間はたっぷりある。

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