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方位磁石の指す方向。

第14章 scene 13




夜風に吹かれながら、
いつもの道を行く。

学校に向かっているみたいで、
なんだか憂鬱だ。

…だけど。


隣にいる二宮の明るい楽しそうな声。
繋いでいる手。

それを思えば、
憂鬱でもなんでもない。


「あ、翔さん、ここだよね?」

「あぁ。気を付けてけよ。」


足場が悪いから。

二宮なんて押したらすぐに転びそうだ。


「…おい、」

「んー?」

「掴まってろよ。」

「…うん。」


ケガなんてさせたくないから。

二宮の一歩前を歩いて、
優しく手を握る。



今以上に、大切にしたい。
今以上に、二宮のことを知りたい。


今年は、もっと…。




「お、見えた」

「わ、ほんとだっ」


見えるかなぁ。なんて
弾んだ声を上げる。

可愛いなぁ、と隣で見ていた。


こんな顔を見せるのは、
頼むから俺だけにして。

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