
方位磁石の指す方向。
第14章 scene 13
そっと手が重なった。
「…?」
ちら、と二宮を横目で見れば
暗がりでもわかるくらい顔が赤くなっていた。
「…あのさ、」
「あぁ?」
「あの、えっと…」
二宮は少し躊躇いがちに口を開いた。
「…今日は、ほんとにほんとに、
ふたりで過ごせてよかった…。」
重なった手がさっきよりも強くなり、
俺を見つめる目が潤み始めた。
…泣い、てる……?
「…にの…和也?」
そっと濡れた頬に手を伸ばした。
温かい涙が指に触れて、
その先に踏み込むことをやめた。
…傷付けたくない、愛したい。
───ただ、今は、抱き締めたい。
「…あぁ、俺もだよ…。
こんなに人を好きになったのは、
お前が初めてだから…。…愛してる。」
今はもう、これ以上の言葉は言えない。
二宮が目を伏せて、俺に体を預けた。
重ねていた手を解いて、
そっと腰に手を回した。
一瞬、ぴくりと二宮の体が動いて、
戸惑いの表情を見せたあと。
「…すき。」
と、蕩けるほど甘い声で囁いた。
