
方位磁石の指す方向。
第14章 scene 13
二宮side
すれ違うカップルたちを見て、
もやもやしていた。
…俺がもし、女の子だったら。
人目を気にしないで翔さんと手を繋いだり、
「好きだよ」って言い合ったり
できたのかなぁ…って。
もやもやしたまま、
着いてしまった破れたフェンス。
俺の手を引く翔さんの背中が、
凄いかっこよくて。
抱きつきたい衝動に駆られながらも、
「かっこいいなぁ。」って思いながら
ただ歩いていた。
だって、無心にならないと
何にも喋れなくなりそうだったから。
大好きって気持ちが溢れちゃいそうで、
恥ずかしくなったりした。
人がいないからって、
大胆なことした。
「好きだ、好きだっ…」
必死な翔さんを見て、
また、泣かされた。
泣きたくなんて、ないのに。
だって俺たち、男同士なんだもん。
世間に認められないことくらい、
わかっているんだ。
でも、やっぱり、
“普通”のカップルみたいになりたかったんだ。
