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方位磁石の指す方向。

第15章 scene 14




漏らした吐息。

『どうしたの?』なんて、
くすくす笑いながら俺の隣にいる
大切な人がもういなくて。


携帯の温もりさえも、
消えていく。

見慣れた街は、もうない。
どこか全くわからないこの場所。


『こんなところでやって行けるのか。』

また、弱気になってしまう。
でも、弱音を吐ける人は、いなくて。
支えてくれる人も、いなくて。

俺はこの地を選んで、
本当によかったのだろうか。

二宮の反対を押し切って、
親の反対を押し切って、
この場所に来てしまって
幸せなんだろうか。


ぼーっと宙を見つめながら
考え直してみる。

たかが四年。されど四年。

その間に、二宮とは、親とは、
あの場所には、何回帰れるのだろう。


…ダメだ。
弱気になっちゃ、ダメだ。

自分の叶えたい夢を、
応援してくれた二宮を
がっかりさせたくなんてない。

応援してくれる人がいる。

それだけで、それだけでいい。

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