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方位磁石の指す方向。

第15章 scene 14


二宮side


翔さんがいなくなってから、
時間の流れが遅く感じる。

朝起きてからが、
すごく憂鬱だ。


朝早くに行く理由も見つからないまま、
朝早くに起きる理由も見つからないまま。

段々生活リズムが崩れていった。


毎朝翔さんと学校に行ってたから、
朝は幸せな気分で満たされていたけど、
今はもう、違う。


「最近和元気ねえよな。
ほら、元気出せよ。」

「はは…ありがと。」


潤くんからオレンジジュースを
受け取り、そっとストローを差し込む。

乾いた声しか出ないし、
目は死んだ魚のように虚ろになっている。

…自分でも体の異変に気付いている。


ちゅう、とストローを吸えば
冷たい液体で口内が満たされる。

…甘みもあるけど、
ちょっと酸っぱいかも。

…俺たちの恋みたい。



なんてバカらしいこと考えては、
涙が溢れるのを堪えている。

最近、毎日毎日、
涙が出てしまう。

翔さんのLINEの一言メッセージを見る度。
会話履歴を見る度。
デートに着ていった服を見る度。
筆箱を見る度。


全部に、翔さんとの思い出が
詰まっているから。

リュックだって、翔さんが
「それいいじゃん。」
って言ってくれたから、
ボロボロになってもずっと使っている。

…あぁ、俺ってすごい単純だ。

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