方位磁石の指す方向。
第16章 scene 15
すぐ傍に二宮がいる。
それだけで、
胸が高鳴ってしまうんだ。
「…腹減ったな」
「そう?」
「うん」
「何食べたい?」
「おいしいもの」
「具体的には?」
「二宮の手作りがいい」
「…くふふ、カレーでいい?」
「おー」
冷蔵庫を開けて、
中の食材とにらめっこをしている。
「残念だけど、これじゃ作れないね」
「えー」
「…買い物行こっか?」
「お、いいね」
「ちょっとまっててー」
パタパタとスリッパを鳴らしながら
忙しなく動く二宮を見つめていると、
頬が自然と緩んでいるのがわかった。
自分の身支度を整えつつ、
その姿をチラ見していた。
「とりあえず、
じゃがいもとにんじんとたまねぎ、
あとは豚肉かな」
「おー、結構あるな」
「うん、それに明日からの事考えたら
卵とか野菜も買っておいた方がいいし…」
「ぷっ…」
唇を触りながら
主婦のようにぶつぶつと独り言をいう二宮。
そんな姿が微笑ましくて、
つい、笑ってしまった。
「なに笑ってんの、バカ」
「いや?
なんか二宮が主婦みたいだと思って」
「…ばっかじゃないの」
はっ、と鼻を鳴らす二宮。
耳まで赤いのはバレバレだ。