方位磁石の指す方向。
第16章 scene 15
何度も角度を変えてキスをされると、
体の奥が疼いた。
翔さんの瞳に捉えられたまま、
逸らせもしないし、閉じることも出来ない。
ただ、見つめていた。
「…ね、終わり…」
これ以上はダメだ。
そう思って、翔さんの胸を押し返した。
「…んんっ」
そんな抵抗も虚しく、
また覆い被さってきた翔さん。
求められているんだ。
そう思えば、嬉しかった。
「っんぅ、」
ガッチリと閉じている唇を
無理やりこじ開けようとしてくる。
嫌だ、と何度も胸を押し返すけれど、
力の差は歴然だ。
「ぃたっ、」
「…あ、ごめん…」
ぱっと手首から手が離れて、
翔さんの体も離れた。
乱れた呼吸のまま、
翔さんに聞いた。
「…なんで、」
どうして。
「やめて、くれなかったんだよ…」
睨みつけるように、
翔さんを見た。
「俺は、こんなこと、
して欲しいわけじゃない…!」
怒っているわけじゃなかった。
ただ、悲しかった。
俺を求めているんじゃなくて、
俺の体だけを求められている気がした。
だから、切なかった。
切なくて切なくて、堪らなかった。
「二宮…」
「触んないで…!」
俺の頬に近づいた翔さんの手を
拒絶した。
もう、涙が溢れてそのまま動けない。