方位磁石の指す方向。
第16章 scene 15
二宮side
「んぁっ、はっぁ、」
誘ったのは俺だ。
「すきっ、すきっ…」
ありったけのこの気持ちを伝えたくて。
「ばか、煽んなって…」
余裕が無いのか、
眉間に皺が寄っている。
俺の手に翔さんの手が重なった。
もっと、近くに感じたい―――…
重なっていない右手を、
翔さんの背中に回した。
動揺した翔さんと目が合ったから、
ほくそ笑んでやった。
そんな俺を見て、
翔さんがふっと笑った。
「…んっ…!?」
押し倒されていたはずが、
いつの間にか俺の上体を起こされて
向き合って抱き締められていた。
…くそ、やられた。
「ぁんっ、あ、ああっ…」
「気持ちい…?」
耳元で低音が響いて、
背中に微かな電流か走る。
負けてられない…
そう思って、翔さんの首に腕を巻き付けて、
無理やり唇を奪った。
それを貪っているうちに、
段々主導権を奪われていることに気付く。
俺からキスをしたつもりが、
されるがままになっていた。
「ふっぅ、んんっ」
ダメだ。
このキスは。
「ぁ、」
唇が離れたことが、惜しくて。
「っ!」
首筋に翔さんの舌が這う。
ダメだ、ダメだダメだ。
「ぁっ、あっ、ああ…っ」
完全に、主導権を握られている。