方位磁石の指す方向。
第17章 Last scene
「遅くなっちゃったなあ」
アパートの前で、ひとり。
結局終電を逃してしまい、
タクシーで帰ってきたのだ。
二宮は怒るだろうか。
でも、連絡が入っていないんだ。
怒るどころか呆れたか?
ふう、と一呼吸してから、
合鍵で扉を開けた。
冷たくて重い気がした。
「ただいまー」
返事は、なし。
もちろん、電気はついていない。
リビングまで行って、
違和感に気づく。
人の気配が、まるでしない。
リビングのベッドには、誰もいない。
嫌な汗が出てきた。
酔いも覚めてしまう。
「二宮?」
しん、と静かな部屋に、
俺の声だけが響いた。
もしかして…
必死に考えを巡らせて、
導き出した答え。
こんな時にあいつが行くのは、
あそこしかない。