方位磁石の指す方向。
第17章 Last scene
「…やっぱり」
二宮の隣に座り、手を取った。
「なんで、わかったの?」
「だってお前、俺のこと好きじゃん」
目も合わせずにそういうと、
力強く抱き締められた。
「ごめんな、遅くなって」
空いたカップが、三つも。
しかも、砂糖の量が半端じゃない。
「体壊すぞ」
「翔さんが早く来てくれてたら、
こんなことになってない」
口は達者だ。
思わず口元を緩ませてしまう。
二宮がいたのは、
俺の大学近くのファミリーレストラン。
アイボリーの壁が好きだと、
二宮が好んで通っていることは知っている。
「深夜料金とられちゃったよ」
まだ不機嫌そうだ。
でも、ふんわりと笑う顔は、
暗がりでもしっかり見える。
「ごめんごめん」
周りに人がいないことを確認してから、
二宮を抱き締めた。
いつもの二宮の匂いがして、
愛おしさが溢れた。
「早く帰ろ、ちょっと寒い」
二宮が俺から体を離した。
薄着だからいけないんだ。
そっとコートを渡して、
手を繋いだ。
「こうすればあったけえよ」
「…うん」
自分のしたことなのに、
なんだか恥ずかしくなってしまった。