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方位磁石の指す方向。

第4章 scene 4






「てことがあったわけで、
俺、翔さんだけは本当に
…本当に失いたくないの。
わかってくれるかな…」

「そう、か…
そんなことあったんだな。

…大丈夫だよ。
軽蔑なんてしないし、
別にちっともおかしいだなんて
思わない。

それよか、話してくれて
ありがとう。
だって、辛い想い出なんだろ?
その、千晴って子とも
母さんと父さんのことも…

…大丈夫だから…本当に。」


そう言ってるうちに
翔さんが泣き始めた。


「ええ、なんで翔さんが
泣くのさぁ~…」

「ごめっ…なんか二宮の
気持ち考えたら泣けてきて…


ほんと、辛かったんだな。
…辛かったな…
もう大丈夫だから」



なんて言って、
俺のシャツを
濡らしてくもんだから
こっちも泣きたくなってきて。

鼻の奥がツンっとなって
涙が出てきた。


「…つらかったよぉ、
もうほんと…ふっ、くっ…」


男子高校生が
二人で泣いてるって
シュールな画。

でも、ほんとに…
翔さんは優しい人だ。
こんな人滅多にいない。


今まで話してきても、
「へえ、」とか「ふうん」って
いう感想だけ。

でも…そっちの方が
心地がよかった。

だって、…本当の友達なんて
俺には存在しなかったから。

そっちの方が
気楽だったんだ。



って。

…朝から俺たちは
なに話してんだろ。
…バカみたい。



目が腫れるのは嫌だから
できるだけ擦らないように
してたけど…
やっぱり潤くんには
バレちゃって…

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