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方位磁石の指す方向。

第5章 scene 5

二宮side



メール、してもいいかな。

画面を優しくなぞり、
ふうっと息を吐く。



…いや、恋人だから別にいいよね。


『翔さん、』


メッセージを送ったら、
すぐに既読がついた。

…翔さんもメールしようと
思っていたのかな、なんて
都合のいいことを考えていた。


『なに、勉強中なんだけど。』


素っ気ない返事が返ってきて
またガックリと落ち込む。


『ごめん…』

『いや、別にいいけど。
謝ることないよ。』

『邪魔したから…』



…あーあ、ほんと
なにやってんかな…


『いいって。
俺も送ろうとしてたから。』




…あ。
やっぱり。



翔さんも俺にメッセージを
送ろうとしてくれたんだ。

それだけの言葉で
気持ちが浮上する。



俺って、
すごい単純だったんだな。


『そっか。嬉しい』


こうやって、
画面越しなら簡単に
想いが伝えられるのに…

ほんと、俺って意気地無し。

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