方位磁石の指す方向。
第5章 scene 5
「あらぁ、ま、いいわ。
そういう年頃だもんね?」
ニヤニヤと俺の顔を見る
母さん。
恥ずかしくなったから、
冷えた麦茶を喉奥に流し込み、
足早に玄関へ向かう。
「ふふ、お母さん今日行かないけど
頑張ってきてね」
優しい笑みを見せた。
…うん。
言われなくても頑張る。
「翔さんっ!」
「あ、」
二宮がへへって可愛らしく
笑うんだ。
…本当にコイツは、
男なんだろうか?
仕草一つ一つが
可愛らしく映る。
「これっ、作ってきたから!
よかったら食べてね?」
「…さんきゅ、」
「ふふ、どういたしまして。
今日の試合、
ほんとに頑張ってね!
……俺、期待してるから、さ。」
「っ、それって…」
「そういうことだから!
頑張って!」
顔を赤くした二宮が
俺の背中をトンっと押した。
「翔さん、ファイト!」
明るい笑顔を見せた二宮が
俺のスポーツバックを引き、
無理に唇を押し付けた。
「これで今日、頑張れるでしょ?
ほらっ、遅刻するよ!」
なんて言って、
手をひらひら振ってる。
「…頑張ってくるから、
応援してて、」
二宮に最高の笑顔を向けて、
駆け出した。