天気予報の恋人
第1章 chapter 1
大きなボストンバッグとゲームを入れた小さなバッグを手に持って、そのサマースクールの集合場所に着くと
先生らしき人からまず名前の確認をされた
そして
「じゃあ、和也くんはあそこ…前から3番目に座ってね」
軽い明るい口調で言われたけど、何も答えられずに僕は無言のまま指示されたバスの座席に乗り込んだ
バスの外で、おかあさんがさっきの先生らしき人と何か話しているのが見える
どうせ僕の悪いとこを挙げ連なって「お願いします」とでも言ってるんだ
本当は僕がいなくなってホッとしてるくせに
ふいに顔を上げたおかあさんが僕に手を振ったけど
僕はそれを無視して、下を向いて持ってきたゲームの電源を入れた
視界の端っこに
悲しそうな顔を “作った“ おかあさんの顔が見えたけど
そんなのは気にする事もしなかった
僕は一人でいい
もう、誰も信じたくない
ゲームがあればそれだけで満足だった
「ねぇねぇ、俺の席どこ~っ?」
やたら大きな声がバス内に響いた
うるさいな、とは思ったけど
自分には関係ない事
…そう考えて、あえて声の主を見る事はしなかった。