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君が教えてくれたこと。

第2章 初めての感情。

「もしもし。」
美夜が出た。
その声は少し震えていて、不安そうで、とてもか細い声だった。
「おい。お前今どこだ。」
その声を聞いたにも関わらず、俺はいつものように冷たくしか声をかけることができなかった。
本当は心配で心配でたまらなくて、美夜が電話に出てホッとしているのに_____。
電話は繋がっているが美夜の返事は返ってこない。
・・・どうかしたのか?
俺の中に、また変な感情がうねり出てくる。
俺の体の中は、青、黒、紫…。
まるでどんよりとした色の血液が、ぐるぐると混ざり合わさって全身に流れているような…。
今にも倒れてしまいそうなほど息苦しかった。
これは……いったい_____。
美夜からは何の言葉も返ってこない。
だが、わずかな吐息は聞こえる。
電話の向こうにいることは確かだった。
「おい。」
その言葉で美夜は目が覚めたのか、やっと話し始めた。
やはり柊一の所にいたらしい。
そこにいることは分かっていたけど、いざ美夜の口から聞いてしまうととても苦しかった。
まるで心臓を握り締められているみたいに_____。
そして、最初のか細い声を思い出し、何かをされたのか。と思うと、体中の体液がまるで沸騰しているかのように熱くなる。
「学校の近くの本屋にいろ。」
勝手に言葉が出ていた。
そして、美夜の返事を聞かずに切ってしまった。
一気に熱が冷め、冷静になる。
……何やってんだ。俺。
しかし、誘ってしまったからにはいなくてはいけない。
そう思い、本屋で待つことにした_____。
30分くらい待っただろうか。
美夜の姿はまだ見えない。
つか、なんで俺待ってるんだよ。
来るなんて言ってないだろ。
くそ、誰も信じないって決めたのに…。
急に自分がバカらしく思えてきた。
頭で考えるよりも先に美夜のことになるといつも勝手に信じてしまう。
いつも勝手に体が動いてしまう。
所詮、人間は人間。
みんな汚い生き物だ。
そんなことを考え、帰ろうと道の方へ向くと美夜がいた。
その瞬間、「信じる」という感情をしまった鍵が一つ
カチャ_____。
と音を立てて外れたのがわかった_____。
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