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『辰蔵さ～ん、ごめんなさい…。かえって迷惑かけちゃいましたね』
と咲は
申し訳なさげに辰蔵をみながら
苦笑いをした。


突然のゲリラ豪雨並みの
通り雨からベランダの洗濯物を
取り込んだ咲の服が
雨でぐしょ濡れになってしまったのだ…。

『いやいや…こちらこそ、大事な服をビショビショにさせちゃったねぇ…』
辰蔵はそういうと
『あ…確か………』
と呟いて
何やら隣の部屋の押し入れを
ガサゴソとしたあと
『これ、よかったら着替えて、今の服を乾燥機で乾かしなさいな』
と咲に
可愛らしい新品のジャージを
差し出した。

辰蔵にはすでに
嫁いだ娘がいて
高校生の孫がいる。
そな孫がいつ遊びに着てもいいように
部屋着用てして
毎年新しいのを購入しては
押し入れにしまっていたのだ。

だが
もう孫どころか娘さえ
奥さんであった郁代が亡くなってからは
まったく顔をださなくなり
押し入れのなかには
何着ものジャージがまだ
袋に入ったまま新品の状態で
しまわれていたのだ…。


そんな事情をききながら
咲は辰蔵の行為にあまえて
ずぶ濡れのシャツとスカートを
乾燥機で乾かさせてもらった
『またお孫さん、いらしてくれたらいいですね』
と咲は
乾燥機が動くのを確認してから
ジャージ姿で
辰蔵の前にでた。

咲の華奢な身体には
そのジャージは少しブカブカなサイズだったが
ジャージ姿の咲を眺めた

辰蔵は
『かわいいのぉあんたは。確か咲良さんじゃったな？』
と目を細めた。
咲は
辰蔵の目には
ジャージ姿の自分を眺めながら
長らく会えていない孫が咲に重なって
写っているんだろうなと
辰蔵の心境を慮った。

すると…