びゅーてぃふる ❦ ふれぐらんす【気象系BL】
第1章 かりそめの遊艶楼
智也さんは俺がこの楼で手伝いを始める前から
魅陰達のお付き人だった
確か神楽は智也の指南を受けていたはずだ
そして光一も…
光一は
もしかして、智也さんのことを…?
それから3日後のことだった
智也さんと神楽が駆け落ちしたのは。
楼の中は騒然とした
二人が行った先などわかるはずもなく
楼主のまぁ兄と俺は途方に暮れた
「神楽の借金は少なかったから
マイナスにはなってはいないが…さすがに参ったな」
智也さんもまぁ兄の身内だった
お付き人という大事な役割を
赤の他人に任せるわけにはいかない
俺がお付き人にならなきゃいけないのか
そうしたら番頭は誰がやる?
適任者が居ない
「太夫の空いたポジションに誰を充てがうかも問題だな
…光一が適任か
お付き人問題は後だ
先に光一の太夫昇格を披露しよう
雅紀。皆を一室に集めてくれるか?」
まぁ兄の指示通り
ホールに招集をかけた
神楽がこの楼からいなくなったことは周知の事実
この招集が何の為なのか、言わずもがな理解出来るであろう魅陰達は
終始落ち着かない様子だった
「楼主より、皆に重大な発表がある
心して聞くように」
ガチャリと扉が開き、楼主が現れると
ざわついていた室内が水を打ったように静まり返った
「皆に集まってもらったのは言うまでもない。周知の通りだ
そこで、太夫昇格となる者を一名、任命する
光一、頼んだぞ」
魅陰達は思った通り、といった反応だった
「お待ちくださいませ、楼主様」
光一はスッと立ち上がり
真っ直ぐに前を見据えてこう言い放った
「私に、お付き人となることを認めていただけないでしょうか?」
「何…?」
「私が太夫に昇格したとて、お付き人の後釜はどうなさるおつもりですか?
番頭は金銭の扱いがあります故、楼主様のお身内の方でなければならないと存じます
ともすれば雅紀さんが適任。
私の借金はとうに終わっております故、尚も魅陰である必要はございません。
私がお付き人に成り代わることで楼に恩義をお返しできると思うのですが、如何でしょうか?」
まぁ兄は眉間にシワを寄せて暫し考え始めた。
「では、誰を太夫に昇格させるというのだ?」
「私よりも適している者がおります故、」
そう言って光一が視線を向けた先に居たのは…
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