びゅーてぃふる ❦ ふれぐらんす【気象系BL】
第1章 かりそめの遊艶楼
❦和也Side❦
淡々と進む、僕の太夫昇格の話に
ただただ流されるしかなかった
ここへ来て、未だ半年余り
魅陰になってからは一ヶ月ほどだ
そんな僕が早々に太夫になるだなんて…
周りの者が忙しなく動き回る中
元、神楽様のお部屋で
僕は一人、じっと座って待つばかり
「和也。入るよ?」
襖越しに聞こえるのは光一様のお声
「はい…!」
慌てて襟を正し
三ツ指を付いて面を下げた
「着物を持っ…ふふっ。僕はもう魅陰ではなく、お付き人だよ?
そんなに畏まらないでおくれ」
光一様がふわりと笑み
僕の髪をそっと撫でた
見慣れぬ、光一様の背広姿に思わず息を呑む
腰まであった髪は短く整えられ
茶色く色味がかかっていた
「雅紀さんが誂えてくれたんだ。
似合わない…かな?」
「とんでもございません!とても…素敵で御座います」
「ふふっ。ありがとう、和也。
お下がりだが、まだまだ着られるから
良かったら譲り受けてくれないか?」
「…よろしいのですか…?」
「和也に、着てほしいんだ」
光一様の後ろに従えていた、慧を始めとした数人の部屋子が着物を持って頭を垂れている
「…ありがとう御座います
大事に…大事に致します故、」
光一様は大きく頷き、部屋子に指示をして
桐の箪笥に着物を仕舞ってくれた
光一様に言付けられ
慧を従えて楼主様のお部屋へと向かった
「和也に御座います」
「あぁ。入りなさい」
「失礼致します」
中には雅紀さんもいらっしゃった
「和也の源氏名が決まったよ」
革の立派な椅子から立ち上がった楼主様が
文字が書かれた一枚の半紙を差し出した
「これは、なんとお読みするのですか…?」
「あぁ…和也には読み書きの教養も必要だったな
これは、『かづき』と読む。
奏でる月、と書いて『奏月』だ」
「奏月…」
「気に入ったか?」
「はい、とても」
「それから、部屋の名だが
太夫に於いてはその部屋を使う者が名付ける事になっている
奏月が決めなさい」
「お部屋の…名前でございますか、」
藍姫様のお部屋は『松の間』
琥珀様のお部屋は『藤の間』
僕の部屋は何と名付けようか…
翔様のお顔がふっと頭を掠めた
あっ。
「『櫻の間』と、名付けとう御座います」
淡々と進む、僕の太夫昇格の話に
ただただ流されるしかなかった
ここへ来て、未だ半年余り
魅陰になってからは一ヶ月ほどだ
そんな僕が早々に太夫になるだなんて…
周りの者が忙しなく動き回る中
元、神楽様のお部屋で
僕は一人、じっと座って待つばかり
「和也。入るよ?」
襖越しに聞こえるのは光一様のお声
「はい…!」
慌てて襟を正し
三ツ指を付いて面を下げた
「着物を持っ…ふふっ。僕はもう魅陰ではなく、お付き人だよ?
そんなに畏まらないでおくれ」
光一様がふわりと笑み
僕の髪をそっと撫でた
見慣れぬ、光一様の背広姿に思わず息を呑む
腰まであった髪は短く整えられ
茶色く色味がかかっていた
「雅紀さんが誂えてくれたんだ。
似合わない…かな?」
「とんでもございません!とても…素敵で御座います」
「ふふっ。ありがとう、和也。
お下がりだが、まだまだ着られるから
良かったら譲り受けてくれないか?」
「…よろしいのですか…?」
「和也に、着てほしいんだ」
光一様の後ろに従えていた、慧を始めとした数人の部屋子が着物を持って頭を垂れている
「…ありがとう御座います
大事に…大事に致します故、」
光一様は大きく頷き、部屋子に指示をして
桐の箪笥に着物を仕舞ってくれた
光一様に言付けられ
慧を従えて楼主様のお部屋へと向かった
「和也に御座います」
「あぁ。入りなさい」
「失礼致します」
中には雅紀さんもいらっしゃった
「和也の源氏名が決まったよ」
革の立派な椅子から立ち上がった楼主様が
文字が書かれた一枚の半紙を差し出した
「これは、なんとお読みするのですか…?」
「あぁ…和也には読み書きの教養も必要だったな
これは、『かづき』と読む。
奏でる月、と書いて『奏月』だ」
「奏月…」
「気に入ったか?」
「はい、とても」
「それから、部屋の名だが
太夫に於いてはその部屋を使う者が名付ける事になっている
奏月が決めなさい」
「お部屋の…名前でございますか、」
藍姫様のお部屋は『松の間』
琥珀様のお部屋は『藤の間』
僕の部屋は何と名付けようか…
翔様のお顔がふっと頭を掠めた
あっ。
「『櫻の間』と、名付けとう御座います」
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