びゅーてぃふる ❦ ふれぐらんす【気象系BL】
第1章 かりそめの遊艶楼
❦ 櫻井Side ❦
番頭に追い返されたのを最後に、俺の夏休みが終わった
再び始まった大学生活は、講義にレポートに忙しくて
なんとか時間が空くよう効率的にやってたけど…
日本に戻ってきた時の、あの行動がいけなかった
家に帰ると、ここからどこにも行かせないって空気を漂わせた父から
会社や経営について夜遅くまで聞かされ…
遊艶楼に行く隙ができない、そんな日々が続いた
「よしっ…」
父の目を盗んで、家を出るチャンスができた
母さんにはうまく言うよう頼んどいたからなんとかなるだろう
会いたい一心で洋館まで走って向かった
前回、帰りがあんな感じになってしまったのと
大学の予定が把握できていなかったのとで
予約をしていけなかった
そのせいで和也はもう、指名されてしまってるんじゃないか…
走りながら思って
洋館の前に着いても不安は拭い切れず…
居てくれ…そんな祈る思いでドアノブを握り、扉を引いた
「いらっしゃいませ、櫻井様」
気まずい感じになると思ってた番頭に
いつもの雰囲気で見世まで案内され、指名を促される
俺は手を伸ばす魅陰達に見向きもしないで
和也がいつも座ってる場所へ視線を伸ばした
「あれ……」
いつもの場所に、和也の姿がない
視線を隅から隅に送っても愛しい子は俺の目に映らない
「……和也は、指名されたのか?」
俺の不安が…的中したのか?
「いえ、まだのはずです」
「…だって…居ないだろ…」
ここに居ないなら、和也は…
俺はその場にへたっと座り込んだ
予約をしなかった自分を責めて
悔しさに顔を歪ませた
「…つい2週間程前になりますが、楼内で色々ございまして」
いきなり、頭上から番頭の声が降りだす
「その色々の中には口外に許可を得ていないところもたくさんございますので、結果だけ申し上げますが…
和也が太夫に昇格いたしました」
「え…」
「ですのでここには"魅陰"の和也は居りません
"太夫"となった奏月なら、最上階に控えてございます」
衝撃を受けた
大学に行ってる間、会えない間…和也はそんなことに…
「…指名はまだ…」
「今のところは…」
「じゃあ指名だ、か…奏月をっ」
パンパンと手を叩いて番頭が部屋子を呼ぶ
見慣れたその子にこそっと耳打ちをして俺に視線が戻った
番頭に追い返されたのを最後に、俺の夏休みが終わった
再び始まった大学生活は、講義にレポートに忙しくて
なんとか時間が空くよう効率的にやってたけど…
日本に戻ってきた時の、あの行動がいけなかった
家に帰ると、ここからどこにも行かせないって空気を漂わせた父から
会社や経営について夜遅くまで聞かされ…
遊艶楼に行く隙ができない、そんな日々が続いた
「よしっ…」
父の目を盗んで、家を出るチャンスができた
母さんにはうまく言うよう頼んどいたからなんとかなるだろう
会いたい一心で洋館まで走って向かった
前回、帰りがあんな感じになってしまったのと
大学の予定が把握できていなかったのとで
予約をしていけなかった
そのせいで和也はもう、指名されてしまってるんじゃないか…
走りながら思って
洋館の前に着いても不安は拭い切れず…
居てくれ…そんな祈る思いでドアノブを握り、扉を引いた
「いらっしゃいませ、櫻井様」
気まずい感じになると思ってた番頭に
いつもの雰囲気で見世まで案内され、指名を促される
俺は手を伸ばす魅陰達に見向きもしないで
和也がいつも座ってる場所へ視線を伸ばした
「あれ……」
いつもの場所に、和也の姿がない
視線を隅から隅に送っても愛しい子は俺の目に映らない
「……和也は、指名されたのか?」
俺の不安が…的中したのか?
「いえ、まだのはずです」
「…だって…居ないだろ…」
ここに居ないなら、和也は…
俺はその場にへたっと座り込んだ
予約をしなかった自分を責めて
悔しさに顔を歪ませた
「…つい2週間程前になりますが、楼内で色々ございまして」
いきなり、頭上から番頭の声が降りだす
「その色々の中には口外に許可を得ていないところもたくさんございますので、結果だけ申し上げますが…
和也が太夫に昇格いたしました」
「え…」
「ですのでここには"魅陰"の和也は居りません
"太夫"となった奏月なら、最上階に控えてございます」
衝撃を受けた
大学に行ってる間、会えない間…和也はそんなことに…
「…指名はまだ…」
「今のところは…」
「じゃあ指名だ、か…奏月をっ」
パンパンと手を叩いて番頭が部屋子を呼ぶ
見慣れたその子にこそっと耳打ちをして俺に視線が戻った
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