びゅーてぃふる ❦ ふれぐらんす【気象系BL】
第1章 かりそめの遊艶楼
足を進めた部屋子の後に続こうと立ち上がる
その前に番頭が立ち塞がった
「…なんだ」
「櫻井様のご指名は伝えるよう言いました
こちらも、奏月も了承済み
これで数時間は他の方から指名が入らない
ですので、部屋に行く前に
少しばかりお時間をいただけませんか…身請け金のお話があります」
最後の方は魅陰達の手前、小さな声で言っていた
あまりの真剣な表情に
部屋子にではなく、場所を変えましょうと歩いていく番頭に着いていった
どんな心境の変化だ
この前はあんなに拒んでいたのに…
思考を巡らせながら、止まった背中を見て俺も足を止める
「まず、前回の謝罪を」
こっちを向いて頭が深々と下げられた
「…いいから、別に」
「本当に申し訳ございませんでした」
「やめろって…早く話を進めてくれ」
こっそり抜け出してきてるんだ、長居はできない
早く和也に会いたいんだよ…
「…太夫と魅陰では身請け金が変わる
あの場で金額をお教え出来なかった理由です
実はあの時から既に太夫昇格の話が、和也に持ち上がっていました
元より素質のある子でしたので、いつなってもおかしくない…状態でした
そんな中途半端な、はっきりしていない段階で
金額のお話など…できなかったのです」
「……なんだ、そうだったのか…」
俺はてっきり、和也に恋心を抱いているから
言えないんじゃないかと…
それは勘違いだったのか
「じゃあもう太夫になったから、金額ははっきりしたんだよな?」
「…それが…」
よしっと思った矢先に不安を煽るような綴り
俺は思わず、え?と顔をしかめた
「和也の…奏月の今後の活躍によっては金額が変わってきます
この先どうなるのか全く分からない状況で
いくら、と提示するのは…不可能なのです」
「…なんだよ…結局言えねぇんじゃねぇか…」
なんだったんだこの時間は…
早く部屋に行ってしまおうと歩みを始めると
「太夫は億単位です
奏月の頑張り次第でもっと、上がるでしょう」
その言葉が背中に当たった
…和也を身請けするには数億…支払わなければならない
逆に、数億支払えば…和也は俺の元に来れる
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